研究紹介
私たちの研究室は心疾患・血液疾患に対してES/iPS細胞を用いて再生医療、創薬、疾患メカニズムの解明を目標として研究を行っています。
現在私たちの研究室では
①再生医療の研究開発
②心疾患、血液疾患の疾患モデル研究・創薬
③分化細胞の成熟制御法の開発
④多能性幹細胞(ES細胞/iPS細胞)の分化能を規定する因子の解明
の4つのテーマに取り組んでいます。
2016年度からはiPS細胞研究所湘南分室においてもT-CiRAプロジェクトの1つとして心筋再生・心不全に対する創薬研究のプロジェクトが始まりました。また2022年からはAltos-CiRA 研究プロジェクトの1つとして心臓の老化・若返り制御に関する研究を開始しています。
私たちの研究室のミッションはiPS細胞研究で見つかったことを臨床応用につなぐことですが、日々の研究において生まれる好奇心を大事にして研究を進めていければと思います。
心筋再生
重症心不全の患者に対する次世代の治療として心筋再生が期待されています。これまで様々な細胞を用いた再生医療が研究されてきましたが、ES/iPS細胞は心臓の機能を回復させるために十分な量の心筋細胞を作製することができるため、再生医療への応用が期待されています。
当研究室では、
- 安全性・有効性の高い次世代の心筋再生治療の開発
- 心筋再生治療に適した心筋細胞やその他細胞の製造法の開発
等の研究を行い、治療効果の高い再生医療を開発することを目指しています。心臓移植の代替となりうる再生医療の開発を目指します。
疾患特異的iPS細胞研究
患者の細胞から樹立したiPS細胞から誘導した細胞を用いて試験管内で疾患を再現することにより、疾患のメカニズムや創薬研究が可能になりました。疾患特異的iPS細胞研究はヒトの心筋細胞、神経細胞、造血系細胞などを安定して誘導することが可能になったことや、CRISPR/Cas9などの遺伝子編集技術により遺伝子異常を修飾することが可能になってきたこともあり、今後の医学研究において重要な役割を担うことが期待されています。当研究室では心疾患(心筋症など)、血液疾患(骨髄異形成症候群など)の患者の細胞から樹立したiPS細胞を用いて、疾患のメカニズム解析や治療薬の開発を目指しています。
心筋分化誘導法、成熟制御法の開発
ES/iPS細胞由来心筋細胞は創薬や薬剤の毒性検査においても注目されています。創薬や薬剤の毒性検査には成人心臓組織に近い成熟した心筋細胞のほうが適していると考えられます。また心筋細胞は心室筋、心房筋、ペースメーカー細胞などさまざまなサブタイプの細胞が存在します。再生医療や創薬、疾患研究のためには目的に応じたサブタイプ、成熟度の細胞を使用することが重要と考えます。分化細胞の分化成熟を制御することにより、再生医療や創薬、疾患研究に適した細胞を効率よく作製する方法の開発を目指しています。
ES/iPS細胞株の分化能を規定しているメカニズムの解明
ES/iPS細胞は分化誘導時に特定の細胞への分化しやすさ(分化指向性)は細胞株ごとに異なります。心筋細胞、血液細胞などの中胚葉系の細胞への分化誘導におけるES/iPS細胞のふるまいを細胞株間で比較解析することにより、ES/iPS細胞のふるまいを規定しているメカニズムの解明、多能性維持・分化のメカニズムの解明、さらにそれらの知見を用いて再生医療などの臨床応用に最適なiPS細胞株の樹立法、分化誘導法の開発を目指しています。
研究環境
オープンラボ
導入機器
- Verity Pro
- QuantStudio3/5
- Bioanalyzer
- Cytiva ImageQuant800
- Flux Analyzer XFPro
- BD LSRFortessa
- gentleMACS Octo Dissociator
- 微小電極システム Maestro
培養室
導入機器
- クリーンベンチ
- 安全キャビネット
- CO2インキュベーター
- FACS AriaII
- BioX 3D printer
- KEYENCE BZ-X710
- 4D-Nucleofector
その他
導入機器
- パッチクランプシステム
- Nextseq2000